発達障害の有名人 栗原類さん『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけれらた理由』感想

発達障害の有名人 栗原類さん『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけれらた理由』感想

 

 発達障害を2016年に告白したモデルでタレントの栗原類さん。「ネガティブすぎるイケメン」として人気を博しましたが、タレントさんとしてより、モデルとしての彼が好きです。この「シザーハンズ」とかすごくかっこいい。

 

栗原類『ネガティブですが、なにか?』メイキング映像

 こちらの著書を読んだときの素直な感想は「これは難儀だな」でした。

 類さんは8歳の時、アメリカでADD(注意欠陥障害)と診断されたそうです。感覚過敏に、強いこだわり、軽い学習障害。短期記憶も長期記憶も苦手な彼は、この著書を多くの人の話を聞きながら、何とか記憶をたどって書いたのだとか。

 私自身、発達障害ですが、感覚過敏に関して、類さんはお経が苦手だったようですね。私は、苦手というより、一時期ですが、お経がなぜかおかしくておかしくて、まともに聞いていられなくて、笑い転げてしまっていました。私は所謂受動型というタイプでおとなしく受け身で親のいうことを素直に聞くいい子だったのですが、これにはさすがに親も困って、法事のお経の時は外に出されていました。

 記憶力が弱く、学校の勉強が困難だったというのも色々苦労があっただろうなと思います。行動に問題があっても勉強が出来れば先生や周りの大人も以外に多めに見てくれたりするものですが、普段の生活にも出来ないことがあり、さらに勉強も出来ない。

 彼の育った環境は、彼の将来の目標、「コメディー俳優になる」という目的からすれば、素晴らしいと思います。アメリカと日本を行き来し、アーティスティックな大人と交流する。発達障害に関しても、早期にわかったため、周りの大人の理解、日本はともかくアメリカではきちんと対応されていたようですし、お母様もそれを十分理解した上で、子育てをし、信頼する精神科医もいる。

 それでも日本での学校生活は、彼自身、特に中学時代は地獄だったというのも良くわかります。ただでさえ、発達障害ゆえの奇異な行動がある。帰国子女のため、なにかあると英語でぶつぶつ話している。ハーフ故の目立つ容姿。子供の頃からモデルをしていて、14歳でメンズノンノの仕事をしている。発達障害への理解が未だに薄い日本、理解されない存在故の怖れ、そして優れた容姿故の嫉妬。彼がネガティブタレントと呼ばれたのは、若さに似合わない丁寧な言葉遣いや、発達障害特有の表情の乏しさに加えて、自己肯定感の低さ故だと思われます。

 しかしながら、類さんが人気ものになったのは、彼の発言や行動が笑いを誘うということだけではなく、そこからにじみ出る謙虚で穏やかな人柄からではないでしょうか。これには彼の母親の並々ならぬ努力があるようです。類さんは感情を顔に出すのが苦手です。そして、記憶力が弱くて、何かを教えてもすぐに忘れてしまいます。だからお母さんは繰り返し、繰り返し、何かしてもらったり、嬉しかったりした時は、それを表情で伝えられない分、感謝し、言葉にするように教えていたそうです。

 発達障害の人すべてが表情に乏しい訳ではありませんが、私もそのタイプです。母は私にたびたび「何か買ってやったりしても、嬉しいのかどうなのかわからない」と言っていました。私は嬉しかったり、悲しかったりという感情がとっさに表情に出せません。表情を作ることも苦手です。そのような言葉を母や周りの人に言われるたびに、周りの人をがっかりさせてしまうことに申し訳ない気持ちになってしまいます。今ではわかっていることですので、出来る限りの笑顔を作ったり感謝の言葉を伝えるよう心掛けているのですが、表情の伴わない感謝の言葉はとってつけたような印象を与えるようで、なかなか難しいところがあります。

 それを、何度も繰り返し大事なことを類さんに伝え続ける。お母さんは類さんがADDだとアメリカで診断されたとき、彼女自身が「典型的なADHD」だと言われたそうです。これは私のブログに記事にも書きましたが、実は大人の発達障害が診断されるときのよくある話なのですよね。

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 お母さんは類さんとは全く違うタイプで記憶力が良くなんでもこなせるタイプ。発達障害と一口に言っても、タイプは本当に人それぞれです。記憶力が良いタイプでなくても、自分のことは棚に上げて、「なんで言ってもわからないの!何度も同じこと言わせないで!」なんてことは言ってしまいがちですよね。

  それをせずに、繰り返し類さんに大事なことは伝えるお母さんは本当に偉いと思います。親として本当に見習わなくてはと思います。

  こちらの本は類さんのパートとお母さん、主治医、類さんの友人の又吉直樹さんとの対談など盛りだくさんの構成です。

 類さんのファンの人、発達障害の当事者の方、発達障害に関して知りたい人。いろんな人に読んで頂きたい内容となっています。

 特に、自身が発達障害で悩んでいる方や親御さんにとっては、どのように大人になって、自立するかというのは重大な課題です。それを考えるための一助となると思います。