読書をしたらアウトプットしよう マインドセット「やればできる! 」の研究

読書をしたらアウトプットしよう マインドセット「やればできる! 」の研究

〇「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」

マインドセット、心のあり方は成果や人の生き方にどれだけの影響を与えるのでしょうか。
こちらの著書では自分の能力は固定的で変わらないという考え「硬直マインドセット」人間の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念「しなやかマインドセット」と表現されます。
個人の能力は一定で向上させることは不可能なのか、あるいは努力や正しい方法の取得で向上出来るのか。
その問いに対する著者、キャロル・S・ドゥエック氏の20年にわたる研究が語られます。
どちらの信念をもつのか、それによってどのように行動するかで、その後の人生に大きな開きが出てくるということです。
例えば、IQは現在の研究結果ではかなりの部分に遺伝の影響があると言われています。
スポーツなどの特殊技能に関しても、身体的な特徴が競技に有利に働くことも多く、努力だけでは越えられないものがあります。
しかしながら、例え素晴らしい才能をにめぐまれながらも、それを活かせない人もいれば、若い頃は凡人だといわれていたのに、後に目ざましい成績を上げる人もいます。
それを分けるものは何なのか。
こちらの本は、自分が才能がないからと言ってあきらめたりすることなく、どのように行動すれば、より自身が望むような生き方ができるかの指針になるものだと思います。

〇やればできるは本当か?

やればできるとはよく言われることです。
しかしながら、それは本当でしょうか?
どれほど頑張って勉強しても思うような試験結果が得られないこともあります。
必死に練習したのに試合で思うような成績があげられないこともあるでしょう。
では「できる」とは何なのでしょうか。
例えば、例えば高校や大学受験、資格試験などで思った成績が取れなかった場合。
それは結果がでなかったという意味では残念ですが、そこからどのように考えるのか。
試験に次の機会に再チャレンジするという選択もありますし、望んではなかったが別の学校に進学することを選ぶこともできます。
大事なのは、その時の結果にどう向き合って、どう行動するかではないでしょうか。
試験に失敗したことで、「自分はどうせダメな人間なのだ」と思ってしまう、あるいは、「今年の試験は難易度が高過ぎた」「たまたま自分の勉強不足で不得意なところが出てしまった」と自分に言い訳をするのと、「今回はここが勉強不足だった。そして勉強時間がもっと必要だった。次はもっと自分の苦手分野を克服して、勉強時間を増やそう」と考えるのかで、その時の結果は変わらなくても、今後の自分にとってはかなりのプラスになるはずです。
こちらの著書では恵まれない環境で育ち、能力がないとみなされていたのに、熱心な教師の指導により、自信を取り戻し、目覚ましい変化をとげた子供たちの事例や、失敗を恐れて努力を怠ってきたものの、その後教師の叱責により、一念発起して、素晴らしい結果を出したヴァイオリニストの話などが紹介されています。

〇「やればできる」ではなぜやらないのか?

「やればできる」のなら文字通りやればよいだけです。
しかしながら、私達はそれができないのでしょうか。
先ほども述べたように、どんなに頑張っても失敗することはあります。
この勉強、あるいは練習を、この方法で何時間やれば結果がでる、といったわかりやすいものは世の中には存在しません。
やった結果、努力が無駄になるのは誰にとっても悲しいことです。
努力が報われなかった時は、「自分はやっぱりダメな人間だから、何をやっても無駄なんだ」と落ち込むことになるかもしれません。
結果がでるのかわからない、そんな不安が「やればできる」を否定してしまうことになるのでないでしょうか。
成果を出すためには、期限などの一定のゴールを定め、その期限で達成するための作戦を立てて、実行することは非常に大切です。
しかしながら、さらに大切なのはそのゴールの先を見据えることではないでしょうか。
受験で例えるのなら、合格は一つのゴールです。
合格、あるいは不合格という結果がでたとしても、それは受験という一定の目的に対するゴールに過ぎません。
どちらの結果がでたとしても、その後にはまだやるべきことがあります。
例え、不合格だったとしても、その経験を踏まえて、努力するのか、自分はダメな人間だとあきらめてしまうのかでは、次に定めるべきゴールへの取り組み方も違ってきますし、次の成果も変わってくるのではないでしょうか。
自分の人生をよりよいものにしたいのであれば、その時の結果だけに一喜一憂せず、努力を続けることが大切なのだと思います。

〇「努力」ではなく「能力」をほめる危険

生まれ持った才能というものがあったとして、それを持っていても成功する人と、そうでない人の差が表れるのはなぜでしょうか。
こちらの著書では、数百名の思春期の学生たちに対して、「能力」をほめるグループと、「努力」をほめたグループではどのような差が出るのかという実験がなされます。
その結果、「能力」をほめた学生ほど、難しいことにチャレンジしないようになり、成績も落ちてしまったそうです。
しかも4割近くが自分の得点を偽って高めに報告したのだそうです。
「努力」をほめたグループはどんどん難しいチャレンジをし、成績も良くなったのだとか。
なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか?
「能力」をほめられると、自分ができるのは頭が良いからで、失敗することは頭が悪いからということになってしまいます。
難しい課題に取り組んで間違うことは、自分の頭の悪さを証明することになってしまいます。
そんなことはしたくありませんので、チャレンジをしたがらなくなり、ますます勉強が楽しくなくなります。
「努力」をほめられれば、難しい課題にチャレンジすることもほめるきっかけになります。
失敗してもその「努力」を続けていけば、やがて成果につながります。
私自身、親でもありますので、この実験の結果には非常に考えさせられるところがありました。
誰しも子供の成長を願っています。
「能力」をほめることも、もちろん、子供に良かれと思ってすることなのに、それが成長の阻害になりかねないとは本当に気を付けるべきだと思いました。

〇マインドセットをしなやかにするには

赤ん坊のとき、誰もがおぼつかない足取りで、何度もころびながらも歩き出そうとし、いつの間にか歩くどころか走ることも出来るようになります。
ただ声をあげたり、泣いたりすることしかできなかったのに、周りの声を聴き、懸命にそれをまねしながら、いつしか複雑な言語を取得します。
赤ん坊はこれほどのことを誰にも強制されずに進んでやれるのに、ほんのちょっとのチャレンジに尻込みし、失敗を恐れて行動できなくなってしまう。
大人になるとどれほどマインドが硬直してしまうのかと情けなく思えてきます。
もちろん、それは何も知らない子供ではなく、経験を積み重ねることによって生まれた恐れではあります。
しかしながら、同時に努力を積み重ねて、成果につながった喜びも大人なら知っているはずです。
「硬直」してその場にとどまるのか、「しなやか」に考えて、一歩踏み出し、さらに成長を続けるのか。
私達は自分で選ぶことができるのです。
さまざまな意味で非常に考えさせられる本でした。
よろしければ、ぜひ手に取ってみてください。